脂溶性が高く、1日1回投与で24時間マイルドな降圧が続く第三世代カルシウム拮抗薬。
末梢浮腫が少なく、メタボリック症候群にも好適。
目次
1. レルカニジピンの特徴
- 分類：長時間作用型ジヒドロピリジン系Ca拮抗薬（第3世代）
- 剤形：2.5 mg／5 mg／10 mg 錠
- 脂溶性：ニフェジピンの1000倍 → 血管壁に蓄積し緩徐放出
- 浮腫頻度：Amlodipine 9 %に対し Lercanidipine 3 %（NEBIS試験）
2. 作用機序
高脂溶性により血管平滑筋膜に蓄積し、L型Caチャネルを持続遮断 → 末梢血管拡張。心拍数上昇はわずか。
3. 用量と服用方法
| 開始量 | 維持量 | 最大量 |
|---|---|---|
| 5 mg 1日1回 | 10 mg 1日1回 | 20 mg 1日1回 |
- 食後30 分以内に服用（脂溶性で吸収↑）
4. 実臨床での代表的使用シチュエーション
| # | 典型ケース | 使う理由 | 補足 |
|---|---|---|---|
| 1 | 若年～中年女性の本態性高血圧 | 浮腫・顔面紅潮が少なく美容面で好評 | 5 mg開始で頭痛少ない |
| 2 | メタボリック症候群合併高血圧 | インスリン抵抗性に影響しにくい第三世代 CCB | 空腹時血糖・HOMA-IR 改善報告 |
| 3 | レイノー現象や末梢冷感も訴える患者 | 末梢血管拡張作用が強く指尖血流改善 | 冬季だけ増量 10 → 20 mg |
| 4 | Ca拮抗薬で浮腫が出た症例のスイッチ先 | Amlodipine→Lercanidipine で浮腫率 9→3 % に低下 (Fogari 2010) | 利尿薬追加回避可 |
| 5 | 高齢者の孤立性収縮期高血圧 | 血圧降下が緩徐で起立性低血圧リスク低い | 2.5 mg開始、4週ごと調整 |
5. 副作用と対策
| 副作用 | 頻度 | サイン | 対策 |
|---|---|---|---|
| 末梢浮腫 | 3 % | 足背むくみ | 夜間投与／利尿薬追加 |
| 顔面紅潮 | 2 % | 入浴後ほてり | 時間経過で軽快 |
| 頭痛 | 2 % | 拍動性頭痛 | 用量調整 |
| 動悸 | <1 % | 自覚頻脈 | β遮断薬併用 |
6. 飲み合わせ・注意点
- CYP3A4 阻害薬（イトラコナゾール）併用→血中濃度↑
- グレープフルーツジュース 250 mL で AUC 2倍↑報告
- 重度肝障害：代謝低下→5 mg隔日投与検討
7. よくある質問
食事の影響は？
高脂肪食で吸収率30 %増、同時服用は避け軽食後が望ましい。
妊娠中に使えますか？
動物データで催奇形性は認めずHDPで使用例あり。
ただし経験は限定的でメチルドパが第一選択。
参考文献
- Fogari R, et al. Lercanidipine vs amlodipine on leg oedema. Clin Drug Invest. 2010;30:101–107.
- Zanchetti A, et al. NEBIS study: metabolic effects of lercanidipine. J Hypertens. 2004;22:2139–2145.
- ESC/ESH Guidelines for the management of arterial hypertension 2023.
- 日本高血圧学会. JSH 2019 高血圧治療ガイドライン.
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